回転する意味は? ダイバーズウオッチのちょっといい話。
【短期連載】世界一わかりやすい時計の話 Vol.2とっても奥が深い腕時計の世界。ウンチクから注目のモデルまで、わかりやすく解説します。
この回転ベゼル、実は反時計回りにしか回転しないのです。これを「逆回転防止ベゼル」といいます。この機構は、時計が何かに接触して、気づかぬうちにベゼルが回転してしまった際の事故を防ぐためにあるのです。時計回りにベゼルが回転してしまったら、なぜ危険なのでしょうか。例えば、15分ぶんの酸素が入ったボンベを使っているダイバーがいるとします。そして潜水して10分が経過したとします。当然分針は回転ベゼルの10分地点を指していなければいけません。ここで何かの拍子にベゼルが時計回りに5分ぶん回転してしまいました。ダイバーはそのことに気づいていません。時計の表示はどうなっているでしょうか。実際は潜り始めてから10分経っているのに、5分ぶん回転してしまったため、ベゼルの潜水時間は5分を指し示しています。酸素ボンベは15分しか持ちませんから、あと5分しか酸素残量がありません。しかし時計を見たダイバーはあと10分酸素の残量があると勘違いしてしまうでしょう。そうなると重大な命に関わる事故に繋がるおそれがあるのです。
逆に反時計回りにベゼルが意図せず動いてしまった場合は、実際より潜水時間が長く表示されるため、酸素切れという事故は防げることになります。
最後にひと目でダイバースウオッチとわかる特徴をもうひとつ挙げておきます。下の写真のリューズ(時間を調整するための3時位置にあるネジ)部分をみると、ケースがリューズの上下まで伸びて、リューズを挟み込んでいます。
これは「リューズガード」と言って、水中の岩などからリューズを守る役割を持っています。最近では、パイロットウオッチでもよく見かけますが、元はダイバーズウオッチの代表的なディテールでした。
このようにダイバーズウオッチには先人の知恵がぎっしり詰まっているのです。実際ダイビングをしなくても、なんだか欲しくなりませんか?
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